実施機関を訪ねて

第1回

日立自動車交通㈱ 佐藤 雅一 代表取締役社長

(東京都足立区綾瀬)

取材リポート

高齢者や障がい者の社会進出に伴って、タクシー乗務員にはお客様に対して"より安全安心で快適な接遇姿勢"が求められています。「UD研修はその基本です。まず経営者や教育担当者の皆様が受講し、研修意義と内容を理解把握したうえで、会社ぐるみで取り組んでいっていただきたいですね」(佐藤社長)

その理念のもと、佐藤社長は実施機関としてのスタート時から業界の若手経営者などに声をかけて広く門戸を開放、UD研修の推進に努めてこられました。日立自動車交通(株)としての2015年7月末までの研修の開催数は36回、受講者は1,753名に及びます。佐藤社長自ら壇上に立って、UD研修テキストの第1章~第2章を担当し、タクシーのバリアフリー化やお客様とのコミュニケーションの重要性を訴えるとともに、UD研修講師養成講座においても、講師の一員として"UD研修の重要性"を熱く語りかけています。

インタビュー

――最初にUD研修に対するお考えをお聞かせください。

私は個人的には、「UD研修は二種免許と同じで全員が受けるべきだ」と考えています。タクシー事業者は、日々朝礼や点呼を通じて安全教育を行っていますが、それと同様にUD研修は欠かせません。またUD研修を一度実施して終わりでは、時が経てば忘れることも生じます。そこで毎日は無理でも、月に一度はUD研修のエッセンスを復習してフォローアップ研修を行うなど、継続して定着させるような活動を行う必要があります。当社ではそうした活動を続けています。まずは、全乗務員にUD研修を受講させていただきたいですね。

――UD研修を開催するにあたって準備等はいかがでしたか。

実施機関の認証申請をはじめ開催・実施・終了後の流れまでは、ユニバーサルドライバー研修推進実行員会の協力を得て、面倒なことは何ひとつありませんでした。第1回目のUD研修は、講師はテキストの第1章~第2章を私が担当し、第3章以降を実行委員会事務局の松村美枝子講師に要請しました。

当初は、当社従業員のみを対象に考えていたのですが、業界をあげて推進していくべきだと思い、知人の若手経営者の方々に声をかけて79名の受講者が集まりました。UD研修は乗務員研修ですが、彼らが「どんな方法でどんな勉強をしているのか」を管理職の皆さんに理解していただかないと、真の乗務員研修はできないと考え、まず管理職の受講を呼びかけたわけです。

場所についても当初は、コストが低廉で利用しやすい地元の公共施設を活用していたのですが、10回目以降くらいからは、参加者の交通の便や会場の広さなどを考慮して自動車会館(千代田区九段南)での開催に切り換えました。また講師に関しても、数名の社員をUD研修講師養成講座に派遣して講師を養成、すべて自力で対応できる体制を整えました。

(受付写真、証明写真の撮影)

――貴社では全社員のUD研修を終えられましたか。

タクシー乗務員のみならず、当社では事務員を含めて全従業員が受講する体制を講じています。その結果、受講した事務員からは「乗務員さんの仕事の厳しさが理解できました。たいへん参考になりました」などと認識を新たにした感想も聞かれ、相互理解の一助ともなっています。タクシーに関わるすべての人にUD研修を受講していただければと望みます。

特に、教育担当の管理職はぜひとも受講していただきたいと願います。極端な言い方をすれば、道路運送法を知らない運行管理者はいないはず。それと同じで、これからの運行管理者はお客様の接遇を語るうえで、UD研修を理解していないと教えられないと思います。「乗務員が研修を受ければそれでいいだろう」では、会社としてはあまりにも無責任だと感じます。ぜひ会社ぐるみで全乗務員を受講させ、その後のフォローアップ体制などを講じられる社内講師(インストラクター)を養成していただければと望みます。

(日立自交㈱では定番の疑似体験)

――東京タクシーセンターが新任乗務員研修の一環としてUD研修を義務化するなど、UD研修が定着化しつつあります。それらについてどのようにお考えですか。

当社はすでに全社員がUD研修を修了し、そのフォローアップに入っております。また、一方ではご指摘のように公益財団法人 東京タクシーセンターで新任乗務員のUD研修が義務化され、現任乗務員の研修も常設化されています。その意味で、UD研修を社外にも門戸を広げて実施するという、当社の役割の一端は終えたのかな? とも感じています。

ユニバーサルドライバー研修推進実行委員会をはじめ、皆様の真摯で積極的なUD研修への取り組み姿勢によって、UD研修の大きな歯車は"ガタン"と回り軌道に乗りつつあります。当社としては、今後は現任乗務員のUD研修の開催をはじめ、東京ハイヤー・タクシー協会などから講師派遣の要請があればそうした活動を通じて貢献していきたいと考えています。一人でも多くのタクシー事業者の皆様の意識改革の一助になればと思います。

――UD研修の将来展望についてご意見をお願いします。

現在のUD研修を初級コースと位置づけると、それが全乗務員の3~5割まで普及してきた段階で、現行の上級クラスを作りスキルアップを図ることが必要だと思います。それには、講師のスキルアップも欠かせないでしょう。

また、上級クラスの受講の修了者(乗務員)には、「このドライバーは最も安全性が高い」「より高い知識がある」として、できれば業界としてインセンティブが出せるような配慮を提案していただきたいと思います。UD車両を導入したら補助金がいただける、UD車両の専用乗り場を作ろうといった動きと同様に、UD研修の上級資格を取得したら"何か仕事にプラスになる"ことを提案してあげられればベストだと考えます。